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やんごとなき力

夜行バスは現代の駕籠である

 

気付けば12月。

働いている方々は実に忙しい日々を送っている。

でも、「じつはわたしはそんなに忙しくない年末を過ごしている」なんて人がいてもいい気がする。忙しそうにしている人たちの、「本当に忙しい人」はその中の何割いるのか、時々気になる。

まわりが忙しくしているので自然とわたしもいそがしいなぁと、

忙しくしてないとまわりに悪いからなぁと、そんなことを思っている人だって全然いないともかぎらない。

まわりの空気に影響されることを、抵抗感無く受け入れやすい特異体質を持つ我々日本人は、師走は忙しいものと決め込みすぎじゃないかと、わたしのような気が小さいくせに忙しいと逆のことをしたがる人種は考えてしまうのだった。

そしてそんな気が小さい人たちが実はたくさんいてくれればいいなと思う。

都会の主要な駅の中に数分黙って立っているだけで、強引に忙しさを作る天からの力が町中に働いていて、その力の持ち主であるやんごとなき方が見えない糸を駆使しつつ人と人をがっちりとつかんで離さない、「これは天啓である。忙しくしろ忙しくしろ〜」やんごとなき方は忙しい空気感をそこかしこに作り出していく。

駅の構内やオフィス街を眺めるとそんな気分になっているような気がしないでもない。

ある種の暇状態のわたしは、こんな一文にもならない想像をたくましくしながらも分かってはいるつもりだ、年末は実際忙しい人が大半だということを。

幸か不幸か、自由気ままに一人で仕事をしているから言える台詞なんだ。

 

11月からウルシの木の伐採をしつつ、

東京に用事があったので1週間ほど岩手を留守にした。

雪がちらつくなかの肌寒い山仕事から一転、

田舎から都会に数時間夜行バスに揺られ、眠ったか寝てないのかいまいちわからない。

夜行バス乗車中と乗車後の、あの独特の高揚感と絶大なる喪失感、

早朝に大都会の真ん中に無理矢理降ろされ、

「こんな時間からどこにいけばいいの・・」あの惨めな気分といったら、経験したものにしか分かるまい。

そんなダークグレーな思い出バス旅行を楽しんだ後ではなおさら、

旅行バッグを持つ手が抜け落ちるんじゃないかというぐらい疲労困憊な白マスク姿の自分が、アスファルトを颯爽と闊歩する出勤途中の健全な社会人の皆様に比し、歩く歩幅もおどおどと何となく肩身の狭い思いをしながら、まぶしい朝日を受けつつ気分を着実に落としていくのだった。

ただ、そうそう悪いことばかりでもない。

早朝の時間をもてあましたら、喫茶店。この時間はほとんど駅前のチェーン店しか開いてないからそこで結構。

豆の香ばしい匂いが店内に充満していればなお良し。肌を刺す早朝の冷たい風を一瞬で暖かく包んでくれる室内のぬくもりが優しい。

バス後ひとときのゆっくりした時間、出勤中の方々をガラス越しに背もたれ椅子に座りながら見つつ、ほんの小さな優越感を入れ立ての熱いコーヒーと一緒にすすりあげる。

「今から長い一日が始まるな」喉と胃袋と鼻孔に広がるコーヒーの香り、

あの一瞬は最高だ。

 

普段人と接触しない山仕事をしているので、都会に出ると必ずと言っていい確率で風邪などの病原菌をお土産に帰宅する。

今回も例に漏れず、しっかりインフルエンザを都会から携えて岩手に帰り、

新大陸の病原菌に耐性のない妻も犠牲にしつつ

その後約1週間二人で苦しんだのだった。

 

 

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「うつわベーシック 碗と椀」
2019年3月13日(水)–5月13日(月)
国立新美術館B1階 SFT GALLERY(東京)
>>詳しくはこちら
「フィールドオブクラフト倉敷」
2018年5月12日(土)–13日(日)
倉敷市芸文館前広場(岡山)
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「飯碗と汁椀展」
2018年3月2日(金)–3月28日(水)
うつわ京都やまほん(京都市)
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